テニスセルフジャッジ超解説

日本テニス協会公認審判員がルールを解説してきます。

52 ジョコビッチの激怒について解説(2020全豪決勝)

ジョコビッチ激怒の流れ

2020全豪オープン決勝戦(ジョコビッチvsティエム)の試合はジョコビッチがファイナルセットの死闘を制し、全豪オープン8度目の優勝を成し遂げました。しかし、その中でジョコビッチが激怒する場面があったので解説します。

 

解説①1回目の激怒:観客

インプレー中に観客からの妨害があったとして、ジョコビッチは「S-ut the f--k up!」と叫びました。これは「黙れ!」「静かにしろ!」という意味のある過激な言葉です。

 

解説②2回目の激怒:タイムバイオレーション 

第3セットのゲームカウント4-4(ジョコビッチサーブ)という重要場面で、ジョコビッチはタイムバイオレーションを2ポイント連続(15-30,15-40)で取られました。四大大会のルールでのタイムバイオレーションは下記の通りになります。

 

タイムバイオレーション1回目警告

タイムバイオレーション2回目:サーバーはファーストサーブの権利を失う。レシーバーは失点

 

ジョコビッチはこのサービスゲームをブレイクされてしまい、このセットを落とす大きな原因となりました。

 

解説③主審への怒り(試合中)

ジョコビッチはブレイクされた直後、チェンジコートの時に主審の靴を数回触わりました。そして、 主審に対して以下の内容を叫びました。

"You made yourself famous in this match."

"Great job."

"Especially second one."

"You are making yourself famous."

「あなた(主審)は自分を有名にしたな」

「素晴らしい仕事だ」

「特に2回目(のタイムバイオレーション)だ」

「あなたは自分を有名にしているよ」

 

つまり、ジョコビッチの抗議内容は「重要場面で自分にペナルティを与えることで主審が目立とうとした」という皮肉を込められています。


Novak Djokovic puts the umpire on the back foot | Australian Open 2020 Final

 

解説④ジョコビッチの主張(試合後)

ジョコビッチは審判に侮辱もしていないし、ルール違反ではないと述べています。以下、ジョコビッチの主張内容です。

 

“For touching his shoe?” 

“I mean, I didn’t know that’s completely forbidden.

“I thought it was a nice really friendly touch. I wasn’t aggressive with him in terms of physical abuse.

“I just couldn’t believe that I got the time violation. It kind of disturbed me. That’s all there is to it.

"Verbally we did have some exchanges, but no insults because if I did insult him, I would get a warning."

"Right now that you tell me that, I want to thank him for not giving me a warning for touching him. That’s all I can say."

「(審判の)靴を触ったこと(がルール違反)?」

「自分は完全にそれが禁止されているとは知らなかったよ。」

「自分はただのフレンドリーなタッチだと思っている。身体への危害という観点からみると、彼に攻撃的なことはしていない。」

「自分はタイムバイオレーションを受けたことがただ信じられなかったんだ。自分のプレーにかなり影響することだからね。それだけだよ。」

「口頭で私たちにはやり取りがあったが、侮辱はしてない。なぜなら、もし私が主審を侮辱していたら、私は警告を受けているからだ。」

「今言えることは主審には感謝を述べたいということだ。主審に触ったことで私に警告は科せられなかったからね。これが私の言える全てだ。」

※英語が堪能な方からすれば、変な訳だと思いますがご了承願います。

 

解説⑤審判に触れることは罰なのか?

四大大会ルール⇓⇓

 “Players shall not at any time physically abuse any official, opponent, spectator or other person within the precincts of the tournament site. Violation of this section shall subject a player to a fine up to $US20,000 for each violation.”

「プレーヤーはトーナメント会場いる職員、対戦相手、観客、または他の人をいかなる時も身体的に危害を加えてはなりません。これは違反するごとに最高20,000ドルの罰金をプレーヤーに科すものとします。」

 

私が調べたところ、「身体への危害」は無許可で相手の身体に触れることも含まれるそうです。つまり、ジョコビッチのこのケースは主審の判断次第ということですが、主審は警告を取りませんでした。

 

解説⑥ショットクロックの導入

四大大会のポイント間は25秒です。これはショットクロックという機械で計測されています。以前はポイント間の時間が可視化できておらず、主審によってポイント間の時間が異なるという問題がありました。そのため、ポイント間の時間統一のために導入されました。

※ショットクロックの説明(英語)⇓⇓動画を見てもらえれば、使っている様子がわかります。


Shot Clock Wins Support In Washington 2018

 

解説⑦セルフジャッジ:暴言と身体的接触

ジョコビッチが行った観客への暴言と審判への身体的接触はセルフジャッジの場合、コードバイオレーションになる可能性が高いです。これはロービング判断になりますが、私なら間違いなく警告を与えます。

 

次回「ジョコビッチのコンタクト問題について解説」

aaatennisrule.hatenadiary.jp

全豪2020解説シリーズ解説編

aaatennisrule.hatenadiary.jp

aaatennisrule.hatenadiary.jp

aaatennisrule.hatenadiary.jp

トッププロのルール問題解説編

aaatennisrule.hatenadiary.jp

aaatennisrule.hatenadiary.jp

THANK YOU FOR READING.

↓↓良ければ読者登録、SNSでの拡散お願いします。


テニスランキング

にほんブログ村 テニスブログへ
にほんブログ村